インストラクター初体験記




はじまり

平成9年6月3日、1通のメールが届いた。

< こんにちは,当方 ****の中村と申します。
<永田さんのホームページを拝見し非常に興味を持ち,是非,一度お話をお伺いしたく
<メールを送らせて頂きました。
<我社では岡山県の牛窓で外国人(12カ国)の子供たちと日本の子供たちとの交流のキ
<ャンプを7月の25日から8月3日までの期間を過ごします。そこで,永田さんにお伺い
<をしたいのですが太鼓とMTBをされているとの事,キャンププログラムにそれらを入
<れたいと考えております。そこで子供たちにご指導をしていただけないかと,考えて
<おります。また,連絡先等を記載しておきますので連絡をとれればと,考えておりま
<すのでよろしくお願いいたします。

突然のメールに目を疑いました。
ホームページを開設して1ヶ月余。予想もしていなかった展開に驚くと共に嬉しくなってすぐに
自分の勤務予定を調べていました。自分の能力も考えずに・・・・・・
せっかくのお誘いでもあるし主旨にも賛同できたので、是非何らかの形で協力したいと思い
勤務の都合上、7月30日以降なら参加できますが・・・と返答しました。
早速、お会いしたいとの事で牛窓での待ち合わせを約束しました。
当日は、早めに車で現地まで行きMTBに乗り換えてキャンプの開催される前島にフェリーで渡りました。
観光案内所で前島の地図を貰い、とりあえず島内を1周することにしました。
しかし、予想はしていたものの想像以上にアップダウンがきつく、しかも殆ど日陰が無い。
距離的には、1周10キロ余と短いものの、8月の暑さと坂道のきつさで子供には、無理では?
と、思いました。
島内を約2周(右周り、左周り)して牛窓に戻り、中村さんにお会いしその旨を伝えました。
中村さんの構想では、レンタルするMTBの関係で小さい子供は、参加させないことと
1回が10名以内になること。10時ぐらいから昼食を含め15時ぐらいまでとし、31日と1日の
2日間を考えているとの事。
暑さ対策として走る時間を短くしてビーチで遊ぶ時間を入れてはとのアドバイスを頂きました。
「まぁー、何とかなるでしょう」と、返答したものの色々な不安が交錯する中、帰路につきました。

その後、2回ほど下見に行きMTBらしい走りのできる場所は無いか?MTBで遊ぶ場所は無いか?
休憩場所は何処にするか?トイレの場所は?コースは?等のチェックをしました。
心配の一つであるコミニケーション対策のため「ウィッキーさんのポケット版英会話」をポケットに
忍ばせて仕事中に開いては練習しようとしていたのですが、眠くなるだけで一向に進みません。
さてさて、どうなる事やら・・・・・
友人は、「ゼスチャーで何とかなるさ」と言うんですが、「そんなに簡単じゃないだろう」と否定して
いたものの当日が近づくにつれて、「ゼスチャーで・・・・」の心境になってきました。
スケジュールとしては、涼しいと思われる午前中にサイクリングをして午後からMTBを使った
ゲームやトライアルの真似事をして遊ぶ予定でいましたが、日陰になるだろうと予想していた
ハウス(宿泊施設)周辺が、予想に反して全く日陰がありません。
暑さに対する不安が、又ひとつ増えました。
更に、追い打ちを掛けるように夜勤勤務の1日延長、夜勤明けに団地内の盆踊り大会。
翌日の早朝に現地入りして打ち合わせをする間もなくスタートするというハードスケジュール。
コミニケーション云々の心配以上に自分の体力の方が心配になりました。

前夜

夜勤勤務明けで2時間の仮眠を取っただけで団地内盆踊り大会の太鼓を叩き、その興奮も
冷めない状態で横になったものの上半身だけが異常に熱く寝付けないまま朝を迎えました。

初日

通勤ラッシュにあう前にとの思いで予定より早めに出発しコンビニで買ったおにぎりを食べ
ながら現地へと車を走らせました。
前島に着いてハウスの方に向かっていると通行止めの表示があり迂回する。
ひょっとして自転車なら通れるかもと思い車に積んであるMTBで走ってみたが通行不可。
迂回するルートは、島内で1.2位を争う程のハードコースで心配が又ひとつ増える。
9時頃にハウスに到着し挨拶もそこそこに打ち合わせを始めると予定が変更になって
1日2組(午前と午後の部)で午前の組は、もうすぐ出発しますとの事。
「聞いてないよー」と、言いたいところだがとりあえずMTBを見せて貰うと・・・・・・
満足に変速ができないものが数台。大急ぎで調整しようとしたがすぐに諦めてしまいました。
その内に子供たちの声が賑やかになりenglishが飛び交う。私に何かを訴えかけてくるが
「ぜーんぜん、わからない」とゼスチャーで言うとすぐに諦めてくれました。
私は、ひとりづつサドルの高さを調整。通訳兼助手の熊野さん(女性)は、チェンジの仕方を教える。
そして、全員を集合させて熊野さんが私を紹介してくれる。「MTBの先生です。」
多分、「先生」と呼ばれるのは生まれて初めてだろうと思うが、何だか恥ずかしい。
注意事項を通訳してもらったあとMTBのチェンジに慣れさすためにハウス前の坂道を数分間、走らせる。
ヘルメットが届いていなかったので届くまでの時間を過ごすため近くのキャンプ場に行き
ダウンヒル、アップヒル(1〜2mぐらい)や、20〜30Cmの段差の下り等で遊ぶ。
やがてヘルメットも届き出発前の記念写真を撮る。
遊んでいる間に上半身裸になっていた2人にシャツを着るように注意するとすかさず「Why?」・・・。
ヘルメットを被る事にも抵抗を示していた彼らが、しきりに暑いからと不平を言う。
転倒時に怪我を大きくする事と走り出したら涼しくなるからと説明し何とか納得してくれる。

出発進行

走り出すといきなりの上り坂。後続の様子を伺いながらゆっくりと登る。
登り切ったところで絶景が目に飛び込んでくる。
穏やかな瀬戸内の海と島々。眼下にカボチャ畑とのろし台跡。
しばらくの間、後続を待っていたがなかなかやってこない。
引き返してみると一人が遅れ気味なので熊野さんに任せて先に進む事にした。
スタート前に「私より前には絶対に出ないこと」と釘をさしていたが下りになると今にも
抜きたそうに私と併走する。
「KeepLeft」と叫ぶが一向に効き目がない。結局最初の休憩地まで併走に近い状態のまま
走り続けました。
先行していた車から水を貰い(レンタサイクルのためボトルが付いていない)水分補給。
休憩地では即席のテントを張る事になっていたが、テントは張られず炎天下のまま休憩。
走っている方が涼しいということで十分な休憩を取らずに出発しました。
今回のメンバーは、比較的年齢層が高く1名を除いて体力的にも問題はなさそうだったので
2回目の休憩も水分補給をしただけで走りだしました。
スタートして1時間足らずで周回コースを1周し出発点のキャンプ場に到着。
最後の1名は、遅くなりそうなので待たずにMTBを置いてビーチに向かいました。
30分以上経ってやっと熊野さんが帰ってきたが、聞くと1名は体調不良のため途中でリタイヤ。
車でハウスに送って行ったが大丈夫だと言われました。
昼前に全員でハウスに戻り解散。
昼食の時間が来ていたが、私自身相当に疲れていた為に食事する気になれずしばらくボーっと
していました。

その2へ